アートトラックの内装をカスタムするのに欠かせない金華山生地。
トラックインテリアといえばこの生地だと言っても過言ではないほど
アートトラック業界において圧倒的なシェアを誇っています。
金華山とはジャガード織機で
織られた生地「ジャガード織り」の一種です。
ジャガード織機は19世紀にフランスの発明家
ジャカールによって考案された織機です。
それまで大人数を掛けて手作業で行っていた複雑な模様の織物を、
自動で織り上げられるようにしたのがジャカード織機です。
いまでも単なるジャガード織りであれば
モケットと呼ばれる生地として生産されたり
電車のシートや国会議事堂のイスなどにも使用されています。
しかし織物業界において、金華山はジャガード織りの生地のなかでも
特に華やかな模様が施された生地のこと、と定義されています。
トラックの内装に使うような細かく華やかな柄が入っているものは
当然生産も難しくなってしまいます。
ただでさえジャガード織機は基本設計が古く、
現在ジャガード織機を製造しているメーカーは国内にはありません。
ジャガード織機メーカーは、今や世界的にも少なくなり
今や非常に貴重な機械となっているのです。
国内の織元は細かなメンテナンスに苦心しながら
織機をなんとか使い続けています。
そんな貴重な機械だけに扱いも繊細です。
自動織機とはいっても、ただ糸をセットして
あとは放っておけばいいというものではありません。
仕上がり状況を定期的にチェックして、
細かな調整を行う必要があります。
問題は、その織元にもジャガード織機を
扱える職人が数えるほどしかいないということ。
現在、いわゆる金華山生地を生産できるメーカーは
和歌山県橋本市近郊に数社存在するのみとなっています。
少子化や需要の変化などによって、
生産拠点も職人も絶滅寸前の状態になってしまいました。
金華山の織元では、海外からの留学生を受け入れたり
若者を雇い入れて職人として育てる試みなどを行っているものの
依然として状況は芳しくないままだそうです。
トラックインテリアの世界では非常に身近に感じられる金華山。
そんな金華山を使って美しく仕上げる
トラックインテリアを守り続けることが、
アートトラックという伝統ある文化を、
そして金華山という伝統的な生地を
後世に伝えることにつながっていくのでしょう。